世界初の電動昇降理容椅子808号

タカラベルモントは、創業以来様々な製品を開発し、様々な出来事を体験して成長してきました。このコーナーでは、その中の一つの出来事を取り上げて紹介いたします。

今回紹介するのは世界初の電動昇降理容椅子「808号」。当社の理容椅子の歩みの中でも画期的な製品といえます。この開発について永年にわたりタカラベルモントでものづくりを担当した庄子長文氏(故人)に聞きました。

世界初の電動理容椅子

1959年ごろ、創業者である吉川秀信社長の強い願いでもあった世界初の電動の理容椅子を作ろうという話が社内で具体化に向け動き出しました。しかし、残念ながら当社には電動昇降装置の開発に必要な技術はほとんどありませんでした。

そのような時に創業者がアメリカの歯科機器メーカーの電動昇降ポンプを持ち帰ってきます。さっそく開発担当者が中心になってその構造を調べました。昇降機構部・電動部・基盤の構成、そしてそれらがベースの上でどのようにリンクした形で搭載されているのかなど非常に興味深く調べました。しかし、理容椅子に求められる昇降の幅や持ち上げる荷重を考えると、このままの機構を採用するのでは無駄も多いため、もっとシンプルな機構を考えなければなりませんでした。

必要な技術の全てが揃っていなかったので、当社技術と他社の技術を組み合わせて当社独自の独創的発想による低圧電動油圧装置が生まれたのです。

1962年に発売された808号

他社技術との組み合わせで誕生

ひとことで電動ポンプといっても、その構造は電動のモーターポンプ部分、椅子を上昇させるシリンダー部分、そして全体を支える基盤部分に分かれています。このそれぞれについて、研究・試作・開発しなければなりませんでした。

まずモーターポンプについては、椅子を何秒で昇降させなければいけないかということから必要な圧や油の量を求めた結果、株式会社島津製作所製のトロコロイドポンプを採用。モーターについては株式会社日立製作所のモーターを組み合わせることにしました。またシリンダーのラム部分については、細くても充分だと判明したが、そのうえで椅子の強度や安定感を考慮するため、シリンダー本体でラム部を支える部分を厚くするなどの工夫を行い、基盤部については、二重ベースとすることで椅子を回転させることができました。

このように各部分について研究をすすめ、世界初の電動理容椅子を開発することができました

しかし、このポンプは頑丈だったものの重量が重く、音・振動共に大きかったため、小型化や騒音防止措置を図らなければなりませんでした。そこで東京焼結金属株式会社と共同で新たなポンプ(現在も使用しているモーターポンプの原形)を完成させることができました。この間、防震ゴムの試作、電磁弁の試作、高圧ホースの試作等々1つ1つが新しい試みであり、このポンプを完成することができたのは、タカラベルモント社員はもちろん各協力企業の担当者の多大な尽力があったためであり、こうした人とのつながりがあったからこそだと思っています。

808号のポンプの機構。
①モーターポンプ部 ②シリンダー部 ③基盤部

理容椅子の基本となるデザインに

このように技術的な視点で見るとタカラベルモトの電動油圧の流れを作ったといえる椅子ですが、一方デザイン的に見ても後の理容椅子のひとつの流れを作ったといえます。この椅子の側面(手すりの下の部分)はアメリカ車を横から見たイメージを意識してデザインされました。この形がその後の理容椅子に受け継がれていったのでした。

※それまでの椅子の昇降はハンドルを手で上下させていました。理容師の方々の手は理容技術にとって大切なもの。電動昇降の理容椅子808号は、この手を守るものとして市場に歓迎され、飛ぶように売れたといいます。その後も人間工学研究で座り心地・寝心地を追求、技術者とお客様双方の快適性を今日まで追求し続けていることで、海外においても、高級サロンへ納品されています。