毛髪内部を高精度&低コストに観察できる方法を求めて

髪をより良い状態に改善するには、毛髪の状態を詳細に把握することが重要です。毛髪は直径約80μmと細いため、顕微鏡で観察するのが一般的です。また、本質ケアの追求に欠かせない毛髪内部のことを知りたい場合には、いかに毛髪の組織を壊さずに切る(観察面を作る)かも重要です。毛髪を詳細に見るための最高峰の手段としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察法がありますが、膨大な手間やコスト(1枚の画像を得るのに約1ヶ月・数十万円かかる外部委託)が必要というジレンマがありました。今回は、このジレンマを解消しながら、自社内で毛髪内部を詳細に見ることに成功した研究事例をご紹介します。

前述の通り、TEMを用いれば高精度の毛髪断面像を得ることができますが、観察までの前処理が多い、専門的な技術・設備が必要など、多くのデメリットがありました。

一方、自社内で、カミソリ等で切断した毛髪を手持ちの走査型電子顕微鏡(SEM[TEMより大幅に安価])で観察する方法もありますが、断面がつぶれた低精度の画像しか得られず、毛髪内部の状態を正確に把握できていない状態でした。

そこで、毛髪を切る「刃物」の材質や形状、切る際の固定の仕方、刃物を0.5μm単位(1cmの2万分の1)で動かせる装置の導入など様々な工夫を図ることで、精密な断面の切り出しを行うとともに、SEM観察では従来重視されていなかった信号を活用する等の発想転換も加えた結果、従来の課題を大幅に改善することに成功しました。

製品開発時に求められる「スピード」と、基礎的解明やカタログ掲載時に求められる「精度」を両立した今回法。この新しい〝眼〝を駆使し、カラー・パーマによる毛髪内部変化やヘアケアによる改善効果の可視化など、未知なる発見を積み重ねて行きたいと思います。

研究者(敬称略)
福原雄大,青池広樹,久下宗一

研究者紹介

化粧品研究開発部 第二研究所 福原雄大さん

「眼で見ることができたら、こんなに楽なことはないのに」小さなものでも目で見ることができれば、たくさんのものを一度に観察することができる。そんなことができたらな~と考えながら、日々顕微鏡とにらめっこしながら観察しています。顕微鏡像をよく見ているからか、最近は大きいものが見にくくなってきました。

化粧品研究開発部 基礎研究センター 久下宗一さん

毛髪を巻寿司に例えると、従来の切り口は、分厚い出刃包丁で押し切った状態でした。米粒はつぶれ、カンピョウは飛び出していました。今回法で使うのは、例えるなら砥ぎたての刺身包丁(しかもダイヤモンド製)です。切り方以外にも様々工夫のあるこの観察法が製品開発に役立てるよう、さらに改良を目指します。