100th ANNIVERSARY タカラベルモント株式会社

男爵鎌田 奉行さん

男爵 鎌田 奉行さん 創業当初から#859号と歩んで半世紀

札幌最古のビルで変わらぬおもてなし

「創業にあたり椅子を選ぶときに、お客さんに寝てもらって頭を洗うかたちの椅子もあったんですが、その頃はまだ男は仰向けで頭を洗われるのは慣れてないと思って。だからこちらを選びました」タカラベルモントが昭和46年に発売した電動の理容椅子#859号を今も愛用し続ける理容店、男爵の鎌田氏は、当時の思い出を語った。鎌田氏が男爵を創業したのは、昭和48年の3月、自身が21歳のときだ。札幌で店を構えてもうすぐ半世紀を迎える。店が入る旧藪商事ビルは、大正13年に建築された札幌初の鉄筋コンクリート造のオフィスビルで、現在では札幌で現存する同種のビルで最古のものとなった。以前は裁判所が近くにあったことから、ビルには弁護士事務所が多く入っており、常連には弁護士のお客様も多かった。「バブルの時には繁盛して、失敗することなど考えもしなかったですね。成功するものだと思ってやっていました」

時代は移って、安い価格でサービスを提供するヘアカットの店が台頭したことで、お客様の数がなかなか増えなくなった。「ちょっと上のレベルに持っていきたかったのが、あの種のサービスが出てから下がっている気がします」長年に渡ってお客様に質の高い技術を提供してきた鎌田氏は、理容業界が直面する厳しい現状を憂えた。

一方で、何十年もの間、変わらずに鎌田氏のもとを訪れる常連もいる。昭和ロマンに満ちた男爵が愛され続ける限り、鎌田氏はタカラベルモントの#859号とともに、日々変わらず確かな技術でお客様を迎えている。「私は、タカラと心中です」男爵の歴史をともに作ってきた#859号の椅子への愛着を語る鎌田氏の顔からは、優しい笑みがこぼれた。

取材日:2017年5月24日

キーワード