100th ANNIVERSARY タカラベルモント株式会社

株式会社坪内美容院 代表取締役 坪内 能莉子 社長 タカラとともに歩み迎える100年

医者の家系から理容を志した祖父

「理髪店を営んでいた私の祖父は、当初、アメリカからコーケン社の理容椅子を輸入していました。そして、大阪に吉川さんという方がいると聞いて紹介してもらい、日本製で同じような椅子を作ってくれないかとお願いしたのが、タカラさんとのお付き合いの始まりです」そう語るのは、今年で創業91年を迎えた坪内美容院の坪内能莉子社長だ。「祖父から依頼を受けたタカラの初代吉川秀信社長は、当時は何と仕上げた椅子を自らリアカーで大阪から神戸までお姉さんと一緒に運んできたそうですよ」坪内社長の祖父である、坪内駒平氏は、松山藩の蜂須賀侯爵の御典医の家系であったが「同じメスを持つなら、人をきれいにしたい」という意思から理容の道を選んだ。そして、大阪で修行を積んだ後に、神戸で坪内美容院の原点ともいえる「坪内理容館」を1890年に開業した。駒平氏は、積極的に西洋の様式を取り入れて洋髪の普及に力を注いだ。そして、のちに駒平氏の三女で坪内社長の母である、坪内弘江氏が美容業を志すこととなる。「母は祖父の姿を見ながら育ち、これからの時代の洋式の美容に興味を持ったそうです。そして、祖父が知り合いだった芝山兼太郎先生に頼み、母を横浜の芝山美容研究所に預けました。そこでキャンブル式の美顔術を習得して神戸に戻った母が、祖父の営む店の上に『坪内美粧院』を開設したんです」そして昭和12年、大阪に松坂屋百貨店がオープンしたときに「坪内美容室」として松坂屋の中に店舗を構えることとなる。「芝山先生は全国の松坂屋とつながりを持っていたこともあり、『大阪に松坂屋ができるなら、ぜひ坪内を』と推してくれたそうです。今日まで続く、坪内のインショップの形態はここからが始まりですね」

 

タカラとの親族同然の深い絆

坪内社長は1980年35歳のときに、先代の弘江氏から会社を継ぐこととなった。そして、先代が亡くなってから現在までは、坪内社長の夫であり取締役の坪内憲治専務と二人三脚で会社を営んできた。坪内社長と憲治専務との結婚では、秀信社長に仲人を務めてもらった。「坪内が、当時の大阪府知事だった左藤義詮先生と親しくさせてもらっていて、当初は仲人をお願いしていたのですが、万博の時期で私用に参加している場合かと横槍が入ってしまったんです。そこで、義詮先生が友人だった秀信社長に『ぜひ代わりにお願いできないか』と頼んでくださり、仲人を引き受けてくださることになったんです」

さらに、デパートやホテルが増えるなか、インショップの形態で事業を拡大していく過程でも、タカラベルモントには世話になった。「全日空ホテルやヒルトンができるときには、タカラの秀一社長に引っ張ってもらいました。『坪内をよろしく』と各所に言って回ってくださり、とても可愛がってもらいましたね」父親を早くに亡くしている坪内社長にとって、秀一社長は父のような存在でもあった。「父と何だかイメージが重なることもあり、よく社長室まで相談に行きましたね。ヒルトンなどの大型出店が続いたときにも、資金繰りを心配した秀一社長が『能莉子さん、大丈夫か。いつでもタカラは保証人になるから』と言ってくれたこともありました。当時の私は『大丈夫です!』と心配ながら強がって答えましたが、本当によく気にかけてくださり、有難かったのを覚えています」

 

母の遺した信念を大切に

事業拡大で資金繰りなどの苦労もあったが、当時80人くらいだった社員も、現在では550人ほどになり、会社は大きく発展した。「今は人材が足りない時代になってきているので、今年の4月からは完全週休2日制を導入するなど、社員の満足を考えて就労環境を整備することに力を注いでいます。そうした面もしっかりと充実させることで、会社の対外的な信用も積み上げることができて、未来につながっていくと考えています」先代の弘江氏も、戦後まもなく大阪府整容国民健康保険組合を作るなど、社会保険や労災・福利厚生面の向上に貢献し、美容師の労働環境の改善に尽力したことで、後に勲五等瑞宝章を受章、没後には従六位が当時の内閣総理大臣より贈られた。

「社訓でもありますが、母はつねに、お客様を大切にし、信用を重んじ、美をもって社会に貢献することを大切にしていました。そうした想いを引き継ぎながら、スタッフが活き活きと働ける会社を目指しています」

坪内社長は、初代から今も続くタカラベルモントとの深い縁を振り返る。「世代の最も近い秀隆社長には公私共に様々なご相談ご指導を頂いており、大変お世話になっております事は、坪内家にとり感謝の念に堪えません。この激動の時を当社も四代にわたり良い関係を続けられ心より感謝いたしております。」

そしてタカラベルモントの今後にも期待を寄せている。「タカラさんは業界の雄です。いろんな意味でまだまだ幼い美容業界なので、さらにリーダーシップをとっていってほしいと願っています。製品面でも、美容師が技術向上のために使える時間を増やせるような、さらに良い製品を開発していただけたらうれしいですね」

取材日:2018年1月10日

キーワード

Youtubeリンク